愛と青春の旅立ち9 サイコパシー7
愛と青春の旅立ち9 サイコパシー7
1945年 8.15終戦
・・・・でも 僕の戦争は終わらない
戦争には余波がある
力が開放された満州
終戦と共に開放された力は
今までの力の使い方 人間関係を変え
勝者と敗者 善人と悪人に分けた
僕の家族は 今まで付き合いのあった中国人に金を奪われ路頭に迷った
僕は あの人が そんなことをする人には思っていなかった
・・・・何故 変わってしまったのだろう
・・・・僕は何も知らなかった 本当の人や世界を
父は希望に満ち満州にやって来た でも今は嫌われ者だ
少ない金で日本本土に どう帰ればいいのか・・・・
日本に帰ったとしても 何もない状態で何が出来るのか
父と母が恐怖に とり付かれた顔をしている
そして恐怖は 恐怖を呼ぶ
何が可笑しいのか ロシア人が僕たちを裸にして笑っている
そして 簡単に父と母は殺されてしまった
・・・・
僕は やり返すことも出来ずに ただ それを見ていた・・・・
涙のように湧き出てくる言葉
殺したい 殺したい あいつらを殺したい
・・・・一人ぼっち
・・・・戦争が終わらない
一人ぼっちの中 死にそうだ
寂しさが つのれば つのるほど怒りが込み上げてくる
殺したい おかしくなりそうだ
棘(とげ)
この男には棘が刺さっている でも その棘を抜いてはいけない
その棘を抜く者は決まっている
必ず現れる
そして必ず 救われる時が来る
男は日本に渡り結婚もし子供もいる
でも忘れる事はなかった
男の棘は抜けてはいない
高齢な体で何を考えている まだ恨んでいるのか
やはり許せる事ではないのか 許すべき物でもないのか
孫が見守る中 病室で男に最後の時が訪れる
目をつぶり 泣ている
死ぬ間際 やっと棘を抜く者が現れた
それは父と母だった
当然 男の父と母はこの世にいない
父さん 母さん お元気で・・・・・さようなら
これは男の心の中にある生きていた記憶
弱い 助けれない 別れと怒りだけの死ぬ事がない記憶
男は最後まで言えなかった言葉と共に決着を着けた