殺しの美学16 エヴァン デェ リオン2
殺しの美学16 エヴァン デェ リオン2
Cさん
長い廊下 その奥にある階段を下りた
少し暗い廊下の その奥にCはいた
いつも一人で ぶつぶつと何かを言っている
でも 聞き耳を立てても それは小さな声で聞こえない
本人に聞いても覚えてはいないらしい
動けない
・・・・ここは どこ
車の後部座席の足元で女が目を覚ました
この時 女はその状況を認める事が出来ない
それは 絶望的と瞬時に把握できる状態にほかならなく
女の意識は凍りついていた
声が出せない 手足 体も動かせない
動けない
・・・・
凍り付いた意識が解け始めるころ
女は状況を分析し始める
・・・・手足が何で縛られているの
何で・・・・
声も出ない 何故ここまでするの 私が何をしたの
もがき続ける女の荒い鼻息に気づき
それを 見下ろすC でも それを女は感じていない
ここから逃げたい
抵抗するほど消費されて行く女の中にある安全な場所
どんなに策を試しても変わらない状況
女の中の安全な逃げ道が残り少なくなったころ 死が見えてくる
もう何も出来ない もうダメ 状況を変えれない
死にたくない
助けて・・・・と 心の奥底から願う
精神にかしゃくなどない もともと精神など存在しない
全ては理屈でしか存在できない
赤ん坊が生まれ小さいなりに情報を集め
その情報や形の有効性などで損得を決め それを かき集め生き残るだけだ
どちらを選べば自分に得なのか その物理的事実の間で揺れるのが
精神や意識ではなく 揺れるのは損得でしかない
・・・・目的地までの辛抱だ 騒ぐなよ
見下ろし 見下す
その時 Cの脳神経は興奮し混線している
それを病気と捉えるものは社会体制の決まりで
社会体制側では Cは病気になる
でも Cはこの時 自由だ
そして その時どんな社会秩序もCに接触しないぎり
Cを異常とは決めつけられない
自由に振る舞っているCに
唯一 接触している女もCを異常と決めつける事は出来ない
もちろん女はCを異常と感じただろう
でも Cを異常と決めつければ女は その時どんな事を考えなければ行けないのか
決めつけてしまえば 女は絶望的な自分の姿を考え自分を傷つけてしまう
考えたくても考えられない そんな考えが燃え尽きるころ 車は止まった
精神や意識は存在しない ただ反射するだけだ
幻覚や間違えを選ぶのも やはり損得
無意識だとしても 必ず理由はある
だから無意識など存在出来ない
ただ 自分にとって利益になる事を論理的に繰り返すだけだ
車から引きずり出される女
・・・・ここはどこ 痛い
いやだ 私に触るな・・・・
恐怖が心の底から こみ上げてくる
Cは抵抗する女を肩に担いぐ
・・・・
時間が凝縮するなか
目から入ってくる強制的な情報 それが頭の中を駆け巡る
病院
乗ってきた車
得体のしれない男の顔
・・・・いやだ どこに連れていくの
状況を把握できない 時間がない 何も出来ない
・・・・殺される
Cが向かったのは病院だった
・・・・おびえるC
結局 Cには行くところがない