いきものがかり９

　　いきものがかり９

　ベッドから娘が窓の外を見ている

　君って　猫が見えるんだってね

　今もいるのか

　・・・・

　猫　好きなのか
　
　・・・・

　じゃ　猫は悪か　悪ならお手をして
　じゅんが右手を差し出す

　・・・・

　それを見ていた母が　じゅんに問い詰める
　あれは何ですか　・・・・お手ですよ

　・・・・娘は犬じゃありません

　耐えられませんか

　・・・・当たり前です

　奇想天外なやり方に戸惑う母

　幻覚は現実と区別がつかない　彼女が幻覚を正しいといえば
　それが正しいんです
　そんな状態で話しても意味はないでしょ
　だから　体に問いかえて行くんですよ
　まずは　簡単な方法でね
　
　男のやり方は拷問だ　食卓でお手を求めるじゅんを見て
　父がつぶやく
　
　お手しなきゃ　ごはん　あげないぞ
　ハイ　お手

　犬のようにお手をする娘

　その姿を見てはしが止まる父　殴りたい気持ちを殺して耐える
　私も色々調べた　長い病院治療も効果はなかった
　じゅんが言う　脳に外傷　変形がない場合
　理由は必ずある事も解った
　問題を薬でおさえても　問題を起こそうとしている発生理由を
　変えなきゃ　何も変わらない事も解った

　でも酷い　娘を犬の様に扱うなと心の中で叫ぶ

　にらむ様に見る父親を横目に　じゅんがつぶやく

　犬も人も変わらない
　病院だとしても変わらない　病院では薬を与えて
　効いたころに　お手を教える
　少なくとも　お手が出来るまでになった事を見た方がいいのでは・・・・

　・・・・

　もともと　エクスシズムなど怪しすぎる
　わらにも　すがる気持ちが早とちりをしたのでは
　そんな事を思いながら　父母はじゅんを見つめていた


　つづく