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地縛霊1

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  地縛霊1

 私は 木のすそに座わり本を読んでいる
 読みかけなのか お気に入りなのか・・・・
 今では あまり思い出せない

 もう時間がない

 私は本を閉じ 目を閉じた

 ピヨ ピヨ  ピヨ ピヨ 鳥の声

 ジー ジー  ジー ジー セミの声

 ザー ザー  ザー ザー 風の声

 その隙間から スーっと風が吹いて ほほにあたる

 きっと 空は青いだろう

 でも 私が目を開ける事はないし 空の青さを感じる事もない
 
 
 ・・・・まるで眠っているよう

 でも体の熱は だんだん奪われ 血は下へ下がり
 私の体が 白く透明になって行く時

 私の手は力をなくし そこから零れ落ちる古い本
 偶然にも開いたページの文章から過去の記憶が少しだけ蘇る

 これは 私が大好きだった本
 最後にこれを読めて良かったと思う
 
 ありがとう そして さようなら 私の大事な本・・・・

 時間が経ち 少しずつ崩れて行く

 私の顔は皮膚が伸び切り 垂れ下がり くずれ落ちる

 匂いに釣られて来た生物達が私の肉を食べている

 私の体は ぼろぼろになり骨が見えだし
 重さに逆らえなくなり崩れ落ちる

 そして 綺麗に食べつくされる

 生き物達が私の痕跡を消して行く
 骨だけになり唯一の私の形は動物達に切り刻まれ
 バラバラになる

 そして その骨も時間と共に小さくなって行く
 
 ・・・・ついに私の形は 完全になくなってしまった

 ・・・・あるのは 

 誰にも知られずに
 そこで死んだ私の誰にも気づかれる事のない
 何も変わらない どこへ行くこともない記憶だけだ

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Category: 地縛霊

地縛霊2

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  地縛霊2

 私は 地縛霊になり最後まで崩れ落ちる
 自分の姿を見ていた
 
 そして 体は崩れはて自分の体は もうそこにはない

 ・・・・何のため ここにいるのか
 霊になり 何故生きているのか

 ある時 私を見ているカエルがいた

 ・・・・カエルさんは私が見えるの

 ・・・・君は何で俺が見えるんだ

 ・・・・

 あなたは何者

 ・・・・君こそ何者なんだ

 解らない 

 ・・・・なんでいるんだ

 多分・・・・幽霊

 ・・・・何も知らないままの幽霊か ぷっ クスクス

 なんで笑うの だって可笑しいだろ
 人間って ちゃんと 死ぬ事にも意味がある事知らないの

 ・・・・カエルさんは知ってるの

 あぁ~ 知ってるよ 俺は戦士だからね
 俺はね 何千個の卵から生まれて
 その大半が食べられてしまう世界の生き残りなんだ
 俺は強い・・・・
 
 へぇ~ そうなんだ

 あぁ~ お・ カプ・・・・

 あっ 

 ・・・・カエルさんが突然現れたネズミに食べられた

 ネズミはカエルさんをくわえ足早に移動しようとしている
 止めなきゃ でも どうすれば・・・・
 
 私は 必死でネズミに覆いかぶさった
 でも ネズミの動きを止めれない 
 あわてる私とは うらはらに
 私の体をすり抜けて行くネズミ 
 
 止まれ・・・・

 何度も ネズミに覆いかぶさる私

 ある時 ネズミが弱って行く事に気づいた
 もう少し 止まれ・・・・
 そしてネズミの動きは止まった
 
 よかった これでカエルさんを助けれる

 ・・・・うなだれるカエルさん
 すごいキズ ・・・・大丈夫
 
 ・・・・

 どうすればいい 

 何もしなくていいよ

 でも・・・・

 いいんだ

 死ぬ事にも意味があるって言っただろ
 その時が来たんだ

 カエルさんには 生きてほしい

 ふふ 君の死にも意味が見いだせる様に祈るよ じゃあな

 待ってよ その意味を聞きたい

 ・・・・
 
 ・・・・カエルさんは死んでしまった

Category: 地縛霊

地縛霊3

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  地縛霊3

 私は 一人・・・・

 長い時間が経ち カエルさんの事も忘れかけた時
 木々が赤く染まり 風が冷たくなった

 一人の男が現れ その男は私の木にロープをかけた

 そして 首を吊った

 ・・・・

 その時 その姿を見て私が何者なのかを思い出した

 この男が死んだのは この男の意思
 でも きっと この男をここに呼んだのは私だろう
 そう感じた時 私は胸をなでおろし少しホッとした

 死と同じように避けられないものがある それは生きる事

 思い出した 私が何者なのか
 あの時 私が最後に呼んでいた本は
 チャップリンのライムライト

 私は世の中を恨んでいたんだ

 ・・・・死にたくなかったんだ

 ・・・・そして これが私の死ぬ事の意味なの

 ・・・・
 
 もし そうなら・・・・
 私には もう これしかないのかな

 ・・・・

 私は どこか 妙にまとまって行く感覚を感じながら
 まるで海に沈んで行くように
 静かに 深く・・・・ 
 そして水面に見える光が少しずつ見えなくなる
 ここでは
 もう音も聞こえない

 

Category: 地縛霊

地縛霊4

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  木


  地縛霊4

 ・・・・死ぬ事にも意味がある

 それは きっと カエルさんが死んでも 
 その体は自然に吸収され自然に帰るという意味

 ・・・・でも私はちがう
 私は その自然の輪の中にいない

 きっと 私は地縛霊でもない
 私は死 死神そのもの・・・・多分それが意味だろう

 誰か来ないかな・・・・そうすれば私の力を見せれるのに


 時間は永遠に続くし たまに人は来てくれる

 ・・・・死 
 もっと 沢山の人に伝えたい
 沢山の死を・・・・伝えたい

 静まり返った部屋の 机の上に乗せられたロウソクの様に
 淡々と燃える炎は いつしか短くなり
 最後のともし火にあえぐ様に消えてなくなる命

 私の足元で息絶える命 理由など判る事もなく死んでいく人
 それを見下ろす感覚

 ある時 その感覚の先に映像が見えた
 そして 私は ある場所にいた

 ・・・・ここは私が生まれた病院
 沢山の子供達

 あそこにいるのは

 ・・・・母さん

 何故 ここに・・・・ それも若い

 あそこにいるのは 若い父さん

 ・・・・
 
 そして その眼下に見下ろしているのは
 生まれたばかりの私・・・・
 
 かわいいだろう

 カエルさん
 やぁー 
 カエルさんも幽霊になったの
 
 ・・・・違うよ 君を連れて行くために来たんだ

 ・・・・

 生まれてきたばかりの君自信を見て どう思う
 ・・・・
 かわいいだろ
 これが 君だよ

 君は これからこの子を殺さなくては行けないんだ
 
 ・・・・なんで 殺さないといけないの

 殺せないか 幼い君自身を
 理由が解らないよ ・・・・なんで
 感じるだろ
 死は平等だよ その時が来たんだ

 死ぬ事にも意味がある 死とは終わりじゃないよ
 死とは 大事な生命なんだ

 ・・・・

 君の中にある大事な命を殺せた時 永遠の死が訪れる
 さぁ 手をこの子にかざしてごらん
 すべてが透明になってくはずだよ
 
 ・・・・

 私は 子供に手をあてがった

 消えて行く

 ・・・・恨みも憎しみも

 子供の私のほほにあてがった手から伝わってくる
 「愛」
 死ぬ事にも意味がある 本当に殺さなくては行けないもの
 カエルさんが言っていた意味が解る
 本当に私が欲しかったもの
 
 これが 死


Category: 地縛霊
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