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キメラ サイコロジー1

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  キメラ サイコロジー1

 ごみ溜めに落とされた私 

 臭い 苦しい 醜い 

 すべてのものが ここにはある

 ここは私一人 誰もいない 

 身を切る寒さ 飢え

 ただ 震えるだけの場所 「闇」

 私が 初めて自分について知ったのは
 何かに 駆り立てられる様に人間に声をかけた時だった
 でも その時 その期待とは関係なく何も返ってくる事はなかった
 

 汚い部屋 野良犬の様な親 

 そのかたわらで私は生きていた

 私は臭い きっと クラスのみんなが言うのだからそうなのだろう

 私は 自分が見つけた場所へ逃げた
 そして 小さな穴を掘り その穴の中で じっと息を殺す様になった
 そして長い長い時が過ぎた 
 

 日差しはここまで届かない

 かすかな明かりも消えていく 私は押し込められる様に
 穴の奥へ落ちていく 

 暗く 暗く 誰にも知られずに

 だが ある日 私の穴に奇妙なものが現れる
 初めて見るいじめ 

 私は氷付いた
 何も出来ないまま 時間だけが過ぎていく

 それは 次から次へと行われる 私の穴は狭くなり
 私は 穴の中でうずもれていた

 押しつぶされながら 誰にも知られずに
  
 つづく

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キメラ サイコロジー2

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  キメラ サイコロジー2

 意識がもうろうとする穴の中で 私は見つけたもの

 私の手首には傷がある その傷は私に世界を教えてくれた
 手首を切り裂いた時から 自分と自分のまわりを取り囲む
 すべてを認識できた 

 あらゆるものが言葉となり 痛みになり形と意味を持たせた

 そして 私は穴の中で何者でもないまま
 押しつぶされて 消えていくのだと

 穴の中で 私は叫んだ 消えたくない 

 助けて
 
 私は 穴からはいずり出た そして世界にある私の居場所を探した
 でも そこで見つけたものは理不尽な対応と決まっていたかのような
 状況だけだった 

 恐怖 ぎまん 

 その恐怖を覆い隠すだけに ぎまんに満ちたルールを
 押し付けてくる先生 

 そして 私の世界は何も変わらないのに
 その結果に安寧し それを誰かに押し付け合い奇妙な形を作っていく世界

 私は一人 

 世界は醜い 

 そんな醜い世界の残骸で
 私の穴は 更にうずもれていった

 つづく
 

キメラ サイコロジー3

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  キメラ サイコロジー いちご白書3

 ある時 母が言った お前を生むんじゃなかった

 母は 混沌とする世界で自分だけで生きて行こうとしている
 そして 広い世界の片隅で小さく生きていく

 でも そんな母にも頼るものがあった 私への暴力だ

 母は私にすがった 
 それは 闇の中で出口を探す様に でも出口など見つからない
 ただ 傷を広げ 闇の中へ隠れていく

 そして矮小な自分をかばうため 恨みながら依存していく
 卑屈に あざとく
 
 私も また私を押しつぶすだけだった
 この世界を恨みながら その母から逃れられずにいた

 私も同じだった 

 世の中の人間も母も何も変わりはしない
 醜く 卑屈で おびえるもの
 憎しみながらも 何かにすがり続けるもの

 つづく

キメラ サイコロジー4

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  キメラ サイコロジー4

 何かが起きている 今 私の目の前で

 見慣れない風景

 動き続けるモニター

 まぶしい光 

 うごめく人達

 何かの夢に飛び込んでしまったよう

 ・・・・まるで現実味がない 

 ここはどこ いったい何が起きているの
 言い知れぬ違和感 ・・・・まるで私の世界が終わりを迎えるようだ

 静か かすかに聞こえる音 遠くで何かをしている
 明るい光 穏やかな空間


 その時 誰かが 私に声をかけてきた

 何故 自ら死を選んだんだ

 ・・・・

 思い出した 

 私は何か変わればいいんじゃないかと思ったんだ
 死のうと思ったわけじゃない 

 ・・・・ただ変われと思ったんだ


 ここは 天国なの・・・  

 違うよ ここは病院

 つづく

キメラ サイコロジー5

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  キメラ サイコロジー5

 私の足はぐちゃぐちゃ 

 飛び降りた時 足から落ちたせい

 車いすの屋上

 屋上にかすかに吹く風 

 風の向こうに見える町

 ・・・・まるで すべてが燃え尽きてしまった様に見える残骸の世界 


 あの時 突然 私の中から恐怖があふれだした 

 そして死ぬことなんか考えもせず
 ただ 変えられると思って駆け上った階段

 そして その先にあるものを 私は手に入れそこなった


 足は はえてこないんだぞ大事にしなくちゃな 

 車いすを押す先生

 こんな状況の中で 先生だけがしゃべっている
 私の事を解っているの それならほっといて


 今の私は 居ても立っても居られない程 迷っているの
 
 ・・・・どうしよう 

 私の傷は少しずつ回復していく ・・・・そして一緒に心も回復していく

 私が元気になれば・・・・ またあの時みたいに・・・・
 
 汚い 消えろ 臭い 恐怖 絶望が見えてくる
 どうしよう 寒い 痛い 私を追い立てるものが来る

 想像を絶する孤独と差別が来る

 震えながら 見下ろす町と
 私の意識だけが研ぎ澄まされていくのを感じていた

 つづく

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