髪の毛
髪の毛
床を何か はいずる音がする・・・・
その音は 時々聞こえてくる
気持ち悪い
日ごろから 気になっていた看護婦は床に耳をあて音を聞いてみた
耳をあてることで音がより鮮明に聞こえてくる
・・・・やっぱり何か はいずる音だ
何だろう・・・・
看護婦の部屋は2階 下の住人が何かしてるのかしら
音を聞きながら ふっと視線を変えると足が見えた
はっとして視線を上げると そこに女が立っていた
・・・・
女は うっすらと目を開け看護婦を見ている
直感的に感じる危険と恐怖
看護婦はすぐ起き上がり女を見る
・・・・あなたは誰
・・・・
女は答えない
そして数秒後 女は消えた
この話を聞き 看護婦の部屋に集まる仲間達
この部屋には 壁のふちの隙間に髪の毛が挟み込まれていた
・・・・誰の髪の毛だろう
髪の毛は一本ずつ 1m間隔で部屋を囲むように挟み込まれている
何かのメッセージなのか・・・・
もし女の霊の本人が ここに住んでいる時に髪の毛を挟んだとしたら
女は死ぬ前に髪の毛を挟んだはずで その時 女は何らかの死が
自分に訪れることを知っていただろう
では何故 髪の毛を残さなくてはいけなかったのか・・・・
何かのメッセージか・・・・
メッセージなら とても分かりにくいメッセージだ
それとも それを発見できる人だけに送ったメッセージなのか・・・・
では何故 部屋を囲うように髪の毛を配置したんだ
それを発見できたとしても意味が分からなければ する意味がない
これはメッセージではなく
何かの考えで本人が本人のためにだけ行動した結果か
部屋を囲うように女の遺物を残さなくてはいけない結果とは・・・・
何かの儀式だろうか
ここに誰も入れさせたくないのか
でも ここはアパート 前の住人がいなくなれば次の住人が
入ってくることは分かっているはず
では 次の住人に何か影響を与えたかったのか
これも おかしい
次の住人に何か影響を与えたとしても
何も意味はないだろう・・・・
それとも意味があるのか
でも こんなやり方で誰かに影響を与えれるのか
現実に そんなやり方は存在するのか
そして死が近い状態で そんなことしか考えられないのか
何故 遺物を残したんだ・・・・
もしかして 女は何かの理由で
自分で自分の墓を作るしか なかったのではないだろうか
これは女の墓標ではないのか
・・・・
もし そうなら とても孤独だっただろう
墓標を作れる意味を知っているのなら どんな人だったんだ
・・・・理由を知りたい
そして この理由に近づけば近づくほど
自分にも この女の霊が見えないだろうか
・・・・だが 髪の毛の事を話したら 看護婦達が髪の毛を集め
トイレに流してしまった
・・・・言うべきではなかった